主要なハイブリッドカーの方式と特徴についてまとめてみた

今や一般的になりつつあるハイブリッドカー。エンジンの苦手な運転領域をモーターが補助することで、効率の良く走ることができるシステムです。

初登場はトヨタのプリウスですが、世の中には色々な方式のハイブリッドカーがあります。それぞれの特徴を整理してみました。

パラレル方式

この模式図の通り、エンジンの動力は変速機を通してタイヤに伝わります。

この出力軸に直列でモーターを配置したのがパラレル方式です。下の図のように変速機とエンジンの間にモーターを挟むレイアウトを取ります。

発進時などにモーターがアシストすることでエンジンの燃費悪化を抑えます。また、減速時にはモーターが運動エネルギーを回生しバッテリーに電気を貯めます。

あくまでモーターはアシスト用のため他のハイブリッドと比べて比較的出力の小さいものが採用されます。

また減速時にエンジンを引きずるため回生効率が悪化するため、モーターとエンジンの間にクラッチを備えるものもあります。このタイプはモーターだけでの発進も可能です。

日産エクストレイルやフーガなどが採用しています。ホンダ初期のハイブリッドであるIMAもこのタイプで、最終型ではクラッチを備えない代わりに可変動弁機構でバルブ休止を行うことによりエンジンの引きずり損失を抑えています。

ホンダはi -DCDと呼ばれるデュアルクラッチトランスミッションと組み合わせたタイプもありました。奇数段のギアがモーターと繋がっており、かなり複雑な動きをするシステムですが、こちらもパラレル式の一種になります。

また48V以下の電圧を扱うモーターで構成されるマイルドハイブリッドや12Vモーターを使うマイクロハイブリッドも、このパターンに分類されます。

発電機であるオルタネーターを強化してモーターとしても扱えるようにしたシステムです。通常の車に搭載される鉛バッテリーはとは別にリチウムイオン電池なもの独立したバッテリーを搭載し鉛蓄電池を増設しています。それを使ってモーター駆動や回生を行います。

レイアウトは普通の車と変わらないために安くて作ることができる一方で、モーターも小出力で回生能力にも乏しいです。モーターのみで発進することもできず燃費向上効果は通常のパラレル式に対して劣ってしまうのが特徴です。

海外モデルは48V駆動のラインナップが多く、マツダのスカイアクティブXと組み合わされるものが24V、スズキのS-エネチャージや日産のS-HYBRIDは12Vのシステムになります。

あくまでアシストのため、燃費向上効果は他のハイブリッドに比べて小さい傾向があります。また、扱う電圧が小さいほど燃費向上効果は小さくなります。

シリーズ方式

エンジンは発電に特化し、エンジンが発電した電力を使ってモーターのみで走行するシステムです。

機構がシンプルなのが特徴で、動力から電力への変換ロスはあるものの、エンジンは効率の良い点でしか運転しないために燃費向上が狙えるのが特徴のシステムです。

エンジンの運転点を絞れるために、より燃費に特化した諸元のエンジンを採用し、攻めたセッティングで運転することができます。

モーターで全速度域を駆動するために、大きめのモーターが搭載されており、スムーズなドライビングフィールが特徴です。全開加速時にはエンジンの電力+バッテリー電力を使えるため、他のモーターがエンジンのアシストとなる場合と同様に瞬間的にはエンジンのスペック以上の出力以上の出力を出すこともできます。

一方で電力への変換ロスが出ることから高速道路のエンジンが得意とするような高負荷での定常走行は苦手です。

日産のe-powerやダイハツのスマートハイブリッドが、この方式を採用しています。

シリーズ・パラレル方式

上記のシリーズ式とパラレル式を組み合わせた複雑なシステムです。エンジンとモーターを走行状況に応じて、常に最適になるように組み合わせて使うシステムです。トヨタのTHS系もこれにあたります。

トヨタで主力のTHS-Ⅱはエンジンの動力を遊星歯車を使った動力分割機構で発電機とタイヤ軸に出力を分けます。発電機の負荷を調整することで動力配分を変化させるシステムです。

トルクの必要な状況では発電機の発電負荷を高めてエンジン動力がタイヤへ伝わるトルクを減らします。その代わりにトルクの強いモーターでアシストします。

トルクが不要なときは逆で発電機の発電負荷を減らしエンジン動力がタイヤへ多く伝わるように制御します。

このようにして状況に応じて最適に動力を分割制御するシステムです。モーターのみの走行も可能です。

また構造はTHSとは異なりますが、ホンダのe:HEVや三菱のプラグインハイブリッドシステムもシリーズ·パラレル式ハイブリッドです。

構造はシリーズ式の上位互換と思ってもらって大丈夫です。

通常走行ではシリーズ式同様にエンジンは発電機に特化して機能します。一方でエンジンが得意とする高速道路などの走行時はクラッチをつなぐことでタイヤへ直接エンジンの動力を送ることができるようになります。

エンジン出力でタイヤを駆動できないシリーズ方式と比較して高速走行での効率が良いのも特徴です。

このようにシリーズ·パラレル方式は全域で効率良い方式です。性能としては最も優れていると言って良いでしょう。

一方でモーターを発電用と駆動用で2つ使用し、複雑なためコストが高くなりやすいのがデメリットです。