もはやついてて当たり前?衝突被害軽減ブレーキの各社ごとの特徴を整理してみた

最新の車ではもはや標準装備になりつつある衝突被害軽減ブレーキ俗にいう自動ブレーキのことです。

実は一口に衝突被害軽減ブレーキと言っても、方式や制御の方法はメーカによって様々で多種多様。それぞれ特徴があります。

今回は国産車の代表的な衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の特徴を整理しました。車選びの際の参考にしてもらえればと思います。

衝突被害軽減ブレーキに使う主なセンサーの種類を整理

まずは、衝突被害軽減ブレーキに使われる各センサーを整理します。これらを理解することによって、各社の自動ブレーキをかなり整理しやすくなります。

カメラ

画像解析により、障害物や車線を検知します。モノラルタイプとステレオタイプがあり、後者は距離も判別にもすぐれています。対象物の形状や標識の認識や、夜間の対向車のライトを判定できるものもあります。歩行者も検知可能です。ただし、見えなければ検知は不可能です。人間の目と同じく雨や雪といった悪天候の視界悪化時は苦手です。

近年はカメラの解像度やカラー化などの大幅な性能向上により夜間を含めた認識性能が向上しています。

ミリ波レーダー

波長の短いレーダーを飛ばして反射波を検知することにより、対象物までの距離がわかります遠くの障害物まで検知でき、自身が発するレーダーの反射を検知するため悪天候時など視界が悪い状態にも強いのが特徴です。ただし反射率の低いものは検知できませんし、分解能も小さいため歩行者のように小さい目標は苦手です。

赤外線レーダー

ミリ波よりさらに波長の短い赤外線を使って対象物との距離を検知できます。波長が短いため長距離は苦手ですが、分解能が細かいため、小さい障害物にも有効です。ミリ波レーダーより廉価です。また、価格は高くなってしまいますがレーダーのようにスキャンされることで、広範囲を検出することもできます。自然界にある波長で悪天候は苦手ですが、カメラよりは夜間でも検知能力が高いです。

ソナー

超音波の反射で物を検出します。近距離の障害物を検知するために使われます。また、後方の検知などにも使われます。廉価で小型化が容易なため昔からバンパーなどに搭載されていました。

では、各社どのようなシステムが仕様されているか、簡単に見ていきます。 また関連して前方を走る車を検知し自動で追従するACC(adaptive cluse control) や 自動でハンドルを操作し、車線のはみ出しを抑える レーンキープアシストの特徴についても簡単に述べます。

トヨタ

トヨタは「Toyota Safety Sense」「Lexus Safety Sense」というブランドを展開しています。かなり幅広い車種で展開されており、ミリ波レーダーと単眼カメラを併用した方式で、歩行者の検知も可能となっています。多くの車種でACC、レーンキープアシストに対応しています。

ただしライズやルーミー、ピクシブシリーズのようなダイハツ製の小型車には後述のスマートアシストが搭載されます。

日産

インテリジェント エマージェンシーブレーキ」シリーズを展開しています。元々は単眼カメラのみでしたが、近年はミリ波レーダーを併用する単眼カメラ+ミリ波レーダー方式に変わりつつありますがミリ波レーダーは前の車のさらに前の車を検知し前方の車の挙動予測にに使用しており、メインの検知機能はカメラで行っているようです。

ACC機能、レーンキープアシスト機能は「プロパイロット」シリーズとして展開されます。最新モデルでは地図情報とGPS位置情報と連動したナビリンク機能付きが展開されていすが、純正ナビとセットオプションとなり高価になるのが欠点です。

さらにその発展系である、スカイラインハイブリッドに搭載されるプロパイロット2.03種類の広角カメラとミリ波レーダーを併用します。さらにサイドや後方も監視しており、合計で7つのカメラ、5つのレーダー、12個の超音波ソナーを備えています。これにより車線変更の提案と補助も可能となります。そして高精度の地図情報を元に走行することにより高速道路で同一車線上であれば、ほぼ完全な手放し運転が可能です。

ホンダ

ホンダの展開する「ホンダセンシング」はミリ波レーダーと単眼カメラを併用したタイプです。 歩行者の検知も可能で、軽自動車から高級車まで一貫してACC機能、レーンキープアシスト機能付きの衝突被害軽減ブレーキが標準装備で搭載されるのが特徴です。

またフィットはミリ波レーダーがオミットされており、単眼カメラのみになります。今後は小型車はこちらが主流になるかもしれません。

レジェンドには世界初のレベル3自動運転機能である「 Honda SENSING Elite」 が搭載されていますが、一般の車への今後の展開は不明です。この装備が付いた車は「高速道路での渋滞中」という限定条件下で車に運転を委託することが可能で、合法的に「手放し&わき見運転」ができます。

スバル

低価格で衝突被害軽減ブレーキ普及のきっかけになったスバルの「アイサイト」。ステレオカメラによって障害物の検知を行います。他車とことなりMTモデルには非搭載です。

また、レヴォーグやアウトバックに搭載される「アイサイトX」ではミリ波レーダーで4方向を監視。交差点の出会い頭などでの事故を予防できるようになります。高速道路の渋滞中に限り手放し運転が可能ですが、レベル3の機能ではないのでドライバーは前方監視の義務があります。

マツダ

マツダの運転支援機能は「i-ACTIVSENSE」というブランドで展開されます。さらにその中でも大きく分けて二種類の機能が展開され、SBS(スマート・ブレーキ・サポート)とアドバンストSCBS (スマート・シティ・ブレーキ・サポート)です。SBSが単眼カメラのみアドバンストSCBSがミリ波レーダーと単眼カメラを併用した方式です。

ロードスターはミリ波レーダーを搭載していないSBSになりますが、ACCなどの機能がオミットされますし高速(80km/h以上)での作動はしません。 アドバンストSCBSはACCやレーンキープアシストなどの機能が設定されます。

また軽自動車はスズキのsuzuki safety support 、商用車はトヨタのToyota Safety Senseに準ずる機能になります。

ダイハツ

ダイハツは「スマートアシスト」を展開しています。最新版のスマアシⅢはカメラの性能をUPさせスバルのアイサイトと同様にステレオカメラに変更されています。日立製のアイサイトと異なり、こちらはデンソー製となります。従来よりも歩行者の検知性能が上がりました。

軽トラのハイゼットには、スマアシⅢの機能を簡素化したスマアシⅢtが展開されます。

三菱

三菱の自動ブレーキは「e-Assist」というブランドです。方式は統一されておらず、車種によって異なります。エクリプスクロス、デリカD:5などは赤外線レーダー+単眼カメラ+ミリ波レーダーの併用方式でACC機能も備えます。RVRやミラージュは単眼カメラ+赤外線レーダーの併用になります。

また、日産と共同開発のeKシリーズは日産のインテリジェント エマージェンシーブレーキに準じた機能となり、単眼カメラ+ミリ波レーダーの併用方式です。

スズキ

スズキの「suzuki safety support」も様々な方式が混在しています。

最新型はハスラーやワゴンRスマイルなどに搭載されるステレオカメラタイプ 。ACC機能も備えます。

採用車種が多い主流のものはワゴンRやジムニーに搭載される単眼カメラ+赤外線レーダー方式。エブリイやイグニスなども最新式と同じステレオカメラタイプですが最新型と異なりACC機能はありません。

まとめ

これら各メーカーで主要に使用しているセンサーを種類毎に並べると以下のようになります。

単眼カメラ+ミリ波レーダー:トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ

単眼カメラ+赤外線レーダー:三菱、スズキ

単眼カメラ+ミリ波レーダー+赤外線レーダー:三菱

ステレオカメラ:スバル、ダイハツ、スズキ

単眼カメラのみ:日産、ホンダ、マツダ

まとめてみると、多いのは単眼カメラ+ミ波レーダーの方式です。お互いのセンサーが弱点を補完することができるという点で優れた組み合わせであることが理由と思われます。

しかしカメラの性能が上がっておりレーダーを採用しなくても性能は実用レベルでは問題ないところまで上がってきているようです。廉価車種では単眼カメラのみとなっていく可能性もあります。

また方式が同じでも性能が同じとは限りません。各車種を横並びに性能評価している団体もありますので、そちらも参考にしてください。

JNCPA 予防性能アセスメント

各自動車の自動ブレーキの方式だけでなく、実際に止まるのかどうかもテスト項目別に細かく確認することができます。こちらのサイトも自動ブレーキ付きの車を選ぶときは、是非とも参考にしてみてください。