ISAの導入でもスピード違反はなくならない?日本に導入される仕様とは?

ISA(Intelligent Speed Assistance 自動制御抑制装置) というシステムの導入が日本でも検討されています。ISAとは 、ドライバーが法定速度を守るよう支援するシステムであり、先進安全装置の一部です。

車載のフロントカメラやカーナビの地図情報から走っている道路の制限速度を認識し、車側がその規制速度に合わせてスピードを制御するというものです。欧州では2022年以降義務化が予定されています。

ISAは日本でも導入の検討が行われていて、現在もEUとの車両の相互認証を進めているため将来導入される可能性が高いと言われてします。日本に導入されるときは、どういう仕様になるのか。現在判明している情報をまとめてみました。

ISAは日本に向いていない?その理由は

まず日本の制限速度の設定に問題があります。郊外のバイパスなど、制限速度や法定速度をオーバーして走ることが当たり前になっている状況も少なくありません。そしてそのような道路では警察も見て見ぬふり状態なのが日常となっています。

現在の車の性能であれば、国内の制限速度+αでも十分安全に走ることが可能であり、守らない人が多すぎるというのが理由です。日本の制限速度の設定は車の性能が低い時代に合わせて制定されたままの道も多く、車の走行性能が上がった今でもそのままになっているのが現状です。

一方、欧州では全体的に日本よりも制限速度が速い設定になっています。そのため日本ほど制限速度を破るほどの速度を出そうとは思いません。その代わりに警察による取り締まりも厳しく、日本と異なり制限速度厳守は当たり前です。また、平均速度も上がるだけではなく市街地では速度をかなり落とすために、安全も十分確保されています。

このように交通事情は欧州と国内では大きく異なるため、欧州の真似をして単純にISAを導入できないというのが現状です。

国内で採用されるISAの仕様は?

実は国土交通省によって既にISAの基本仕様書が提示されています。その内容を簡単に以下にまとめました。

・制限速度を認識して、それを超えないように速度を車両が制御する

基本コンセプトです。制限速度の良み取りはカメラによる認識か、GPSとナビの地図データをリンクさせて読み取るかといった方法になります。それらの方法で車両が認識した制限速度を超えないように車両が自動で速度を制御するシステムです。

・対象車は全四輪車

二輪は対象外となっており対象は四輪車だけです。二輪はドライバーの意図しないブレーキ操作で転倒する恐れがあるためです。またカメラによる先進ブレーキ搭載車両がなくナビの普及率も高くないことから、速度を認識する手段が普及していないのも理由です。

・ドライバーがスイッチ操作等でISAはON/OFF可能

悪天候などで制限速度を読み取れない場合もありますし、画像解析方式であれば読み取りエラーの可能性もあります。そのためドライバーが任意にON/OFFの切り替えが可能になることが設計指針に明記されています。

前述のような制限速度の実態も影響しているかも知れません。

・ISAはアクセル操作で意図的に制限速度オーバーも可能だが警告装置が作動する

基本的には制限速度の上限に合わせて車が速度を制御するのがISAですが、ISAがONの状態であってもドライバーが意図的に制限速度をオーバーさせることもできる構造になっています。その場合は制限速度をオーバーしていることを知らせる仕組みが備わることになります。

具体的にはアクセルに反力を与えたり警報で知らせるような仕様が求められます。

まとめ

国内での導入も予想され、検討されているISAの仕様をまとめてみました。

解除が可能のなので、SNSで言われているように全ての道路で制限速度を超えることができないというわけではなさそうです。

実際そのようなシステムにすると不満が続出し車が売れなくなるのは目に見えてますし、日本での制限速度の実態を考えるとイグニッションONと同時にISAをOFFにしてほぼ使わない人の方が多い気がします。

暴走事故などを減らすためにISAは有効ですが、日本では道路の設定速度の整備が甘く、その効果は十分とは言えない装備になりそうです。

ISAが効果を発揮するためには、実態と車の性能に合った制限速度整備をした上で、より強制力の強いISAの実装が必要だと思います。



参考資料

自動速度制御装置(ISA)基本設計書 国土交通省