EVは主流になる?電気自動車は本当にエコカーなのか?

2020年6月3日

世界で普及が進められている電動化。その中でも最近、急に存在感が増しているのはBEV(Battery Electric Vehicle)です。かつては「未来の乗り物」の代名詞的存在であったこともある電気自動車ですが、各自動車メーカーがラインナップするようになりつつあり、テスラのような純EVのみを扱うメーカーも出てきました。

ここまで急速にEVが増えている理由は、主に各国政府が定める燃費の規制に対応するためのものです。こちらの記事にも規制について触れています。

EVを増やさざるをえない車業界

電気だけで走り排気ガスの出ない電気自動車は昔からエコな乗り物とされ、未来の車としてSFなどに頻繁に登場します。

しかし、本当に電気自動車が今の内燃機関の自動車ほど普及する未来は来るのでしょうか。ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関はEVに駆逐されてしまうのでしょうか

今後の電気自動車を取り巻く環境と、電気自動車を普及させる意義を考察していきます。

そもそもEVはゼロエミッションなのか?電気自動車を普及させる理由は?

電気だけで走行し、走る時に排気ガスの出ないEVはエコカーというイメージがあります。つまりゼロエミッションで地球温暖化の原因となっていると言われるCO2も排出しませんし、NOxやTHC(Total Hydro Carbon)といった人体に悪影響を及ぼす有害物質も排出しません。だから電気自動車はエコと一般的に言われています。

しかしそもそも、その認識はある意味間違いです。確かに走っているEVからは排気ガスは出ません。しかし、走るための電気を発電するためにCO2を出している場合が殆どです。EVがエコかどうかは、発電所の設備によるということです。

例えば、国内では火力発電所による発電が大部分を占めています

日本の電源別発電量の推移 電気事業連合会HPより

2017年度には81%がCO2を排出する火力発電です。さらに火力発電のうち約4割近くがCO2の排出量が特に多い石炭火力発電となっています。

日本の石炭火力発電への依存の高さは以前、NEWSでも話題になっていました。かつてはCO2を発生しない原子力発電が総発電量の3割を占めていましたが、東日本大震災の時の福島第一原発の事故により原子力発電は殆ど停止状態になっており、さらに火力発電への依存が高くなっています。

このようにCO2を大量に排出する発電に頼っている日本では電気自動車は完璧なエコカーとは言い難い現状があります。

次に世界の主要国の発電方式の構成比を示したグラフを載せます。

世界の電源別発電量 電気事業連合会HPより

世界に目を向けても火力発電に大部分を頼る似たような現状の国が多いことがわかります。

豊富な水源で水力発電の割合が大きいカナダやブラジル、原子力発電の依存度が大きいフランス、自然エネルギーの割合が比較的大きいイギリスやドイツ。これらの国ではEVによるCO2の排出低減効果は大きいと思われますが、殆どの国でとEVはエコな乗り物とは簡単には言い難い現状があるようです。

実際に電気自動車はどれくらいエコに走れるのか

ここで言う「エコ」とはCO2の排出量として定義します。実際にEVが走行するときにどれくらいのCO2を排出しているのか、計算してみます。

そのためには、EVが充電する電力を発電する時にどの程度のCO2を排出しているか知る必要があります。こちらのHPに各電力会社の電力販売量と販売電力あたりのCO2排出量の一覧が掲載されていました。こちらを参考にします。

電力販売量
(千kWh)
CO2排出量
(kg-CO2/kWh)
東京電力エナジーパートナー 18437578 462
中部電力 10131799472
関西電力 9636092 418
東北電力 6184966 523
九州電力 6072200 463
中国電力 4527496 636
北海道電力 2995871 656
北陸電力 2262113 574
四国電力 1922256 535
平均491.3

その他色んな電力会社が電力を販売していますが、主要電力会社の平均CO2排出量は491.3kg-CO2/kWhとなります。他の細かい電力販売会社の値を考慮しても大きく外してはいないと思います。

ここで走行中に排出するCO2を比較します。

EV代表として日産リーフの標準モデル。比較として近い車格であり全長がほど近いトヨタのカローラツーリング1.8Lモデル1.8L HEVモデルをピックアップしてみます。燃費の値にはWLTCモードを使用しました。

充電効率は日本の一般家庭を想定し、この論文から85.1%とします。急速充電器を使用すれば、充電効率は約90%まで上がりますが、ほとんどの充電は帰宅し、夜に寝ている間に行うことが大半だと思いますので、こちらを採用します。

CO2はガソリン1Lあたり2322g排出するとします。根拠は国が定めたこちらの値です。それらの値を元に走行中に排出するCO2を算出すると以下のようになります。

電費 or 燃費走行距離あたりのCO2排出量
CO2-kg/km
リーフ120Wh/km69.2
カローラツーリングHEV29km/L82.0
カローラツーリング14.6km/L159.0

参考:カローラツーリング リーフ

このようにCO2の排出量は電気自動車であるリーフがカローラHEVより13%ほど良い結果になりました。国内で走行するならば、電気自動車はもっともエコな選択肢となります。ただし、その差はHEV車とそう大きくはありません。よく言われる「ゼロエミッション」の謳い文句からは程遠い位置にいます。

またEVの排出するCO2は、その国の発電事情によって左右されます。

横軸を発電量あたりのCO2排出量とし、縦軸をEVの走行距離あたりのCO2排出量としたグラフを書いてみます。

このグラフより、ハイブリットカーよりCO2排出量を抑えるには約580 CO2-kg/kWhの発電性能を持つ発電事情になっている必要があります。

ここで各国のCO2排出係数を確認してみます。

2016年のデータですが、先進国では十分に発電係数が小さい値となっています。ただし発電量あたりのCO2排出量は中国やインドは580kg/kWhを大幅にオーバーしており、電気自動車はエコとは言えない存在になっています。

またEVが非常に苦手とするのが冬の走行です。暖房を使うとエンジンの排熱を利用できるわけではないので、ヒーターを使う必要があり走行効率が大幅に低下します。明確なデータはありませんが20~40%程度は効率が落ちるそうです。そうなるとCO2排出性能における優劣は国内でも簡単にHEV車とひっくり返る可能性も出てきます。

つまり電気自動車だけを普及させても意味はなく、同時に先進国も含めて発電所の性能も底上げする必要があります

また電気自動車は大容量のバッテリーを搭載するために、製造時に発生するCO2は通常の車よりも多いです。 これも、EVが純粋にエコと言えない理由の1つになります。

このように製造から廃却までのCO2排出量を評価することが本来は最も重要なのですが、生涯走行距離も車種によってバラつきが大きく正確な比較は難しいです。例えば日本の中古車は新興国でも需要が高くかなりの過走行まで使われます。軽自動車以外であればガソリン車、HEV車に関わらず世界のどこかしらで需要があります。一方、EVは充電インフラが不十分なためあまり中古車で長く使われることは少ないようです。

電気自動車のメリット

多くの国でCO2の排出量を下げる効果がありそうではあるものの、効果は国や季節によってバラつきがあり、そう簡単にはエコカーとは言い難い電気自動車。これを普及させるメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

最も期待される効果は都市部の環境改善があります。都市部に内燃機関車両が集中的に多く集まることにより、都市部の空気が非常に汚れた都市が世界中に多くあります。

中国の大都市部や、ディーゼル車両の多い欧州の各都市。東京も決して良いとは言えないと思います。

エンジン付きの車を都市部から減らし、郊外(もしくは都市の中心から少し離れたところ)で発電を行うことで都市部の空気を改善することが期待できます。

もうひとつ電気自動車に期待できるのが、蓄電池としての使い方。電気自動車には大容量の蓄電池が搭載されており、普及が進み台数が増えれば国内には莫大な蓄電池が存在することになります。

国内では経済活動のため昼間の電力の消費量が夜間より多いのですが、電気自動車を夜間に充電することにより電力消費量を平準化することができます。また供給が不安定な自然エネルギー発電の電力を蓄電し、同様に電力消費量を平準化することができます。

こういう使い方をすることで水素社会の水素と同じような効果が期待でき、自然エネルギーによる発電を効率良く使うことができます。→水素が次世代エネルギーに選ばれた理由

自然エネルギーによる発電量をもっと増やすことができるようになれば、CO2を減らす観点でも電気自動車の優位性はさらに高まってきます。

また、蓄電池の存在は災害時や発電所のトラブル時にも有効です。発電所からの電力供給が止まってしまっても、電気自動車に蓄電した電力で電化製品を使うことができます。

一般的な車であれば12V電源のみであり、最大使用電力も限られていますが、電気自動車ならば大電力を消費する電化製品を使うこともできます。

電気自動車はエンジンに置き換わるか

内燃機関は駆逐され、電気自動車に置きかわる

こういうことが一般的によく言われていますが、実際はどうなのでしょうか。個人的には完全に置き換わるのはまだまだ遠い未来の話だと思っています電気自動車の普及には超えなければならない高い壁がいくつも存在するからです。

·エネルギー密度

バッテリーのエネルギー密度はEV問題では大きな問題となります。バッテリーが重量辺りに使える蓄えられるエネルギーはガソリン等の石油燃料に比べ微々たるものです。リチウムイオン電池が120Wh/kg程度に対し、石油は約12000Wh/kgと言われておりリチウムイオン電池の約100倍のエネルギー密度となります。内燃機関で走行に持っている全エネルギーを使えるわけではないのですが、そのうち25%を使えているとしてもバッテリーの25倍という高密度なエネルギーを石油は持っています。

この数字は航続距離に大きく効いてきます。航続距離を伸ばすためにはバッテリーを大量に搭載しなければなりません。しかしバッテリーを大量に搭載すると重量が格段に増えていき、走行抵抗も増えてしまいます。また当然ですが、車体の積載量にも限界があります。さらにバッテリーには貴金属が多く使われており、バッテリーの搭載量を増やすと値段も大きく跳ね上がります。電気自動車を広く普及させるには、このエネルギー密度問題をブレークスルーする必要があります。

またこの問題はEVがエコであるかどうかの定義にも大きく関わってきます。上記で算出したリーフとカローラの重量差と航続可能距離を確認してみます。

車重[kg]航続可能距離[km]
リーフ1510322
カローラツーリングHEV13701247
カローラツーリング1310730

参考:カローラツーリング リーフ

航続可能距離はリーフが圧倒的に短いにも関わらず、車重はHEVモデルと比べても140kg変わってきます。車種が違うので単純な比較はできませんが、EVにすることで大幅な重量増化は避けられません

この重量差はバッテリーのエネルギー密度の低さ故に大型車になるほど顕著になりますつまりEVをどんどん大型にしていくと、どこかで走行中のCO2排出量でHEV車に勝てなくなり、どこかで車両として成立しないラインが出てきます。

·充電時間の問題

バッテリーは化学反応によって電気を充電したり取り出したりできます。それらの反応には当然ながら時間がかかります。使う時は少しずつ使うので問題ありませんが、エネルギーを充電する時にはそのスピードが大きくネックとなります。物理的に液体を流しこめば良いだけの内燃機関にそのスピードで勝てることはまずありません。充電時間がかかるということは移動平均速度が大きく落ちます。移動モビリティとしても物流用途としても、目的地へ辿り着くための時間ロスが大きくなる可能性があり、これは大きな問題です。

充電技術が進歩し、専用設備を高電圧による急速充電が可能になりました。しかしそれでも満充電の80%まで30分かかります。(充電器の性能やバッテリー容量にもよりますが)

1回の充電に30分かかることはユーザーにとってもデメリットですが、商業的にもかなり問題です。最低30分ということは24hひっきりなしに充電に来ても1つの充電設備につき48台しか捌くことができません。儲けも少ない上に全国の車を充電器で捌こうと思うと膨大な数が必要です。

これを解決する方法はいくつか考えられます。

ひとつは走行しながらの無線充電。電力を供給しながら走れば充電時間の問題は解決できます。ただしこれには道路の大幅な改修が必要となります。また充電効率も問題になってきます。ワイヤレス充電は受信機と送信機の距離が大きく効率に関係するのでSUVなどは不利です。

2つ目はバッテリーを交換式にすること。充電時間を待つ必要がなくなります。

バッテリーの規格化が必要ですが、中国ではタクシーを中心に実用化が始まっており専用ステーションに入れば車体下からバッテリーを交換する設備があるようです。また、2輪では台湾のGogoroというベンチャー企業がバッテリーステーションを整備して、同様の方式で実施しています

Gogoro

バッテリー交換スポットはアプリで探すことができます。日常の足として近距離の利用が多い小型スクーターならではの方法ですね。

しかし、やはり四輪用となると大規模な設備が必要で規格化する必要もあるため普及にはしばらくかかりそうです。

·発電所の発電量問題

充電するためにはその電気をどこかで発電することが必要です。電気自動車が普及するほど発電所の負荷はあがることになります。しかし原子力発電を止めてしまい、旧式の火力発電所までも運転している今の日本にはそれほど余力はありません。電気自動車を普及させるということは、その電力不足に益々拍車をかけることになってしまいます。そして現実的にトラックなど輸送も含めた今の道路交通を全て発電所の電力に頼るのはほぼ不可能でしょう。少なくとも増やすときは発電所の建造も必須となるため、徐々に台数を増やしていく必要があります

まとめ

エコカーとして普及しつつある電気自動車の現状についてまとめてみました。

EVは決してゼロエミッションではなく、国によってはEVはエコな乗り物とは簡単には言い難い現状があります

また同時に、電気自動車の普及には非常に高いハードルが待ち受けており、内燃機関はまだまだ主流には違いないと思います。やはり内燃機関を如何に効率よく走らせるかが、地球環境改善のためには、まだ大いに重要なようです。

車雑談

Posted by 管理人