街乗りSUVブームの歴史

2019年11月18日


現在、かつてない程に自動車業界ではSUVがブームです。どの自動車メーカーもこぞってSUVを開発しています。今までSUVとは縁もゆかりもなかったベントレーやランボルギーニまでSUVをラインナップに加えるようになりました。

File:Lamborghini Urus 20180306 Genf 2018.jpg by Alexander Migl licence:CC BY-SA 4.0

File:Bentley Bentayga Diesel – Frontansicht, 24. Juni 2017, Düsseldorf.jpg by M 93 licence:CC BY-SA 3.0

国内でも同様に高い人気を誇り、各社SUVのラインナップを充実させています。メーカーとしては単価が高く利益を出せるジャンルで台数が売れるので、参入するのは当然の流れです。

SUVとは何か

SUVとはSport Utility Vehicleの略。通常より最低地上高が高くとられた車を指すことが多いですが、しっかりと定まっているわけではありません。

よくSUVと言うとバブル期のRVブームで売れたパジェロやハイラックスサーフなどを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、当時と今では少し毛色が違います。かつてのRVブームの主役は強固なフレームに高い悪路走破性を加えた車が主役でした。

一方、昨今のSUVのブームでメジャーになっているのは乗用車のモノコックボディをベースに車高を上げた車。このジャンルのヒットの引き金となったのがトヨタ RAV4。見た目はクロカン風テイストですが、FF乗用車をベースに車高を上げて、RV車風のスタイルを作り出しています。同時期に発売されたホンダCR-Vもそのブームを牽引したと言えると思います。

しかし、現代まで続くこのビックSUVブームを作り上げた1番の起爆剤となったのは初代トヨタ ハリアーと言っていいでしょう。

File:Toyota Harrier (first generation) (front), Kuala Lumpur.jpg by Two hundred percent~commonswiki licence:CC BY-SA 3.0,2.5,2.0,1.0


初登場は1997年。今までレジャー用途一辺倒であったSUVに「高級」という新しい価値を持たせました。Rレジャー用途に不向きな高級志向。当然、悪路走破性に関してはほとんど重視されていません。

SUVとしての性能を捨てたSUV。合理的に考えれば、「乗用車と同等の室内でありながら、乗用車より重くて走行性能も燃費も悪く、かつてのRV車程の悪路走行性能もない」悪いとこ取りの車。しかし、これが大ヒット。北米、国内共に巨大なプレミアムSUV市場を作り出しました。

SUVが人気な理由

何故、ハリアーが売れたのか。スタイリッシュな外観も要員であると思います。高級車に求められる「威圧感」と「高級感」を上手くアピールできており、「高級車」とし完成度が高かったからでしょう。

車体の大きさは「高級車」にとっては重要な要素です。大きい車であるほど、その雰囲気を出す事ができます。SUVであれば、高さ方向にも大きさがあり高級車としてのアピールにも申し分ありません。

そして、乗用車ベースゆえの乗り心地の良さと燃費等の使い勝手の良さ。乗用車ベースであれば軽量で丈夫なモノコックフレームであり、FFベースであれば室内を広く取る事も可能です。

未舗装は探さなければ走る機会もない先進国で、もはやかつてのようなオフロード性能は不要になっていました。そう言った市場ではモノコックベースの車が求められるのは当然の流れです。


さらに、この後SUVブームは高級車ではない車にまで発展します。これの火付け役になった車が日産ジューク

排気量が2000cc以下のSUV市場ではまだまだ直線基調のクロカン車風のデザインが主流でした。そんな無骨なデザインのSUVが多かった中に、ジュークはクーペと融合させたような斬新なデザインで搭乗。

ハリアーのように流線型を多用したスタイリッシュなスタイルに、まるで2ドアに見えるようなリアドアヒンジ。これまでのSUVとは一線を課したSUVデザインの提案でした。

これが見事に大ヒット。見栄えが良くてオフロードを走る必要がない生活スタイルにマッチ。燃費も随分良くなりました。 ハリアーのヒットと同じ理屈ですね。 このジュークのヒットも世界中に影響を与え、今や各社コンパクトな都市型SUVをラインナップしています。

そして個人的には、車高が高い故の見晴らしの良さもブームの要因ではないかと思っています。車の近くの死角は増えてしまいますが、やはり遠くまで見渡せるドライビングポイントは街中でも運転しやすいものです。着座位置ももスポーツカーやセダンと異なり高く、ボンネットが見えるため車の間隔をつかみ易い車種も多いです。また、車高が高いため段差等に気を使う必要もありません。

こういった特徴は車や物に溢れるコンクリートジャングルの都会にぴったり。道路環境をより多く把握できることは運転のし易さに繋がります。

まさに、「舗装された街乗りのためのSUV」が売れる車業界。それが今のSUVブームなのです。