三菱自動車がまた不正?ディーゼル車の排ガス試験で不正疑惑

2020年2月3日

2020年1月21日、ドイツの検察当局が三菱自動車が販売したディーゼル車の排ガスの有害物質規制を実際よりも少なく計測されるようにした疑いがあるとして、ドイツの現地法人を捜査すると報道されました。

独フランクフルトの検察当局は21日、ディーゼル車の排ガス規制を逃れる不正な装置を搭載したとして、三菱自動車のドイツの複数の事業所を詐欺の疑いで捜索したと発表した。三菱自に部品を供給するメーカー2社や、販売会社の幹部らも捜査対象になっている。フランクフルトやハノーバーなどの拠点が捜索された。

朝日新聞デジタル

これが真実であれば三菱自動車としては2000年、2004年のリコール隠し、2016年の燃費偽装に続いて4度目の大きな不正となります。

三菱自動車の不正の歴史

三菱自動車と言えば今では不正の多い、あまり売れていないメーカーの印象がありますが、かつては日本でもトヨタ、日産に継ぐのシェアを誇ったこともあるメジャーな自動車メーカーでした。

事の発端は2000年に問題となったリコール隠しです。社員の匿名内部告発によって多数のリコールが30年以上に渡って隠蔽され、一部は届出を行わずに「闇改修」していた事実が明らかになりました。

また、2004年にはさらなるリコール隠蔽が発覚。三菱製トラックの構造欠陥が原因となった死亡事故も横浜で2002年に発生しています。この事件は池井戸潤が書いた「空飛ぶタイヤ」という小説のモデルになった事件です。

この2つのリコール隠し事件により顧客からの信頼を失い三菱自動車のブランドは大幅に低下しました。

また、2016年にはモード燃費の不正も発覚。走行抵抗を実際よりも小さく設定することでカタログ燃費を良くみえるようにしていました。

さらに今回は2015年9月以降に登録された排気量1.6Lのディーゼル車と、12年11月以降に登録された2.2L以上のディーゼル車に対して排ガス測定中だけ有害物質が少なく排出されるように細工をしていた疑いがもたれています。

ディーゼル車の排気ガス不正とは?具体的にどんな不正?

今回の不正では排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を基準よりも計測中だけ少なくした疑いがあります。手法は明らかになっていませんが、フォルクスワーゲンが行っていたものと同じものだと思われます。

車に搭載されたECUがモード走行中と認識すると(ハンドル操作の有無で判定するのか、走行モードで判定するのかは不明ですが)、循環させる排気ガスの量を増やす制御です。

排気ガスを再循環させるEGRというシステムは一般的に取り入れられる手法ですが、多く循環させるほど燃焼温度が下がるためNOxの排出が減ります。ただしEGRを多く導入するとパワーの低下を伴います。

また、同時にNOx触媒の働きを停止させる制御も入っていたようです。 NOx吸蔵型還元触媒では吸着したNOxをTHCによって還元しますが、還元時には通常よりも濃い燃料で運転する必要があり、燃費が悪くなります。尿素SCRシステム搭載車の場合は排ガス中のNOxを尿素により還元するシステムですが、 こちらの働きも止めていた疑いがあります。

どちらの制御かはわかりませんが、同様の不正が三菱自動車内でも行われていたのではないかと推測されます。

今後の展開は?日本国内のディーゼル車は不正の対象?

詳細な不正の内容は今後操作が進むと明らかになっていくと思われます。また、ディーゼルシステムを担当したデンソーも捜査対象となっており、不正に関わった疑いがあります。

1.6Lのディーゼルエンジンに関してはPSAから提供を受けたもののようです。PSAでは既に同様の不正が発覚しており、こちらに関してはほぼ不正は間違いないと思われます。

2.2Lエンジンは4N14型と推測され、国内でもデリカD:5やエクリプスクロスに搭載されています。

同様の不正プログラムが組まれている可能性は十分にあるため、今後も注視が必要です。

追記 1月30日

三菱自動車が不正を否定する公式コメントを出しました。

対象エンジンはPSA製の1.6Lエンジンと、三菱製の2.2Lエンジンで間違いないとの事です。その上で以下のようなコメントを出しています。

1.  当社製エンジンは、認証試験で用いられる台上試験においてのみ規制値に適合させることを意図した、いわゆる「デフィートデバイス」の装備は行っておりません。

 2.  当社製エンジン制御は、ドイツ連邦運輸局(KBA)にすべて開示し、指摘事項があればそれに応じた改善を行ってまいりました。 

3.  上記の対象車種は、いずれも、排ガス規制を含め、法規に則り認証を取得して販売しております。全ての販売車両はKBAの認可を得ております。

三菱自動車ニュースリリース

否定はしていますが、数々の不正を行ってきた三菱自動車。信頼できるかどうかは怪しいところではあります。

また情報があれば更新します。