カルロス・ゴーン事件とは?事件の概要をわかりやすく説明します

2020年1月9日

2019年暮れにビックニュースが飛び込んできました。金融商品取引法違反で保釈中であったカルロス・ゴーンがレバノンへ密出国したとのニュースが入ってきました。

2018年に逮捕されたカルロス・ゴーン。何故逮捕されたのか、今後はどうなるのか。事件の今後の流れと概要をわかりやすく本サイトで解説したいと思います。

カルロス・ゴーンは何故逮捕された?

カルロス・ゴーン by World Economic Forum license:CC BY-SA 2.0

日産の会長であったカルロス・ゴーン氏が逮捕されたのは「金融商品取引法違反」という罪。2018年11月19日に逮捕されています。

具体的には有価証券報告書に虚偽の記載をした、つまり本人の報酬を実際より低く記載したことによる逮捕となっています。自宅購入資金を会社に負担させるなどにより報酬を低く見せており、内部からの密告により明るみに出たようです。

同様の罪で日産自動車の取締役であったグレッグ・ケリー氏も同時に逮捕されています。

10年間で100億円あった報酬を50億円としていたようです。とんでもない金額で想像もつきませんね…

有価証券報告書とは事業の年度毎に作成が義務付けられている外部への開示資料です。虚偽の記載は犯罪とされています。

有価証券報告書虚偽記載は、金融商品取引法に違反する犯罪で、同法197条により、個人は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又は併科、法人は7億円以下の罰金と定められている。

wikipedia 有価証券

カルロス・ゴーンはどんな人物?

カルロス・ゴーンはレバノン人の両親からブラジルで産まれました。中等教育はレバノンで受けており、その後フランスの工業学校を卒業後、大手タイヤメーカーであるミシュランに入社しています。レバノン、ブラジル、フランスの3カ国の国籍を持っています。

ミシュランでの働きを評価され、ルノーの上席副社長に抜擢されました。ルノー再建に貢献し、「コストカッター」の異名を持ちます

その後1999年に当時業績不振でルノーに資金提供を受けていた日産自動車のCEOとして就任日産リバイバルプランにより日産を再建します。

村山工場など車両組立工場3箇所、部品工場2箇所を閉鎖し、国内の年間生産能力を240万台から165万台へと削減。

全世界でのグループ人員を2万1,000人削減し、購買コストを20%圧縮するために、下請企業を約半分に減らした。

子会社・関連会社1400社のうち、基幹部分として残す4社を除く全ての会社の保有株式を売却。これによって下請企業の合併再編が急速に進んだ

wikipedia 日産リバイバルプラン

この再建プランにより販売車種も大きく整理されましたね。グロリア、セドリック、ローレル、パルサー、ラシーン、プリメーラ…挙げれば枚挙に遑がありませんが、様々な歴史ある日産の車が販売中止または統合されました

ルノーと共同開発のプラットフォームが開発され、車種も多くがグローバルモデルとなりました。そんなグローバルプラットフォーム化の第一弾が3代目マーチとなります。

日産マーチ by Tennen-Gas CC BY-SA 3.0

マーチを皮切りにグローバルプラットフォームを採用したモデルを次々とラインナップしていきます。

これらのコストカットにより日産の収益体質は改善し、世界を代表する自動車メーカーの座を取り戻しました。

カルロス・ゴーン氏はこのように非常に優れた経歴の持ち主です。またアラビア語、フランス語、英語、ポルトガル語、スペイン語の5ヶ国語を自在に操るマルチリンガルで、記憶力も相当いいと評判の優秀な人物のようです。

カルロス・ゴーンは何故逃走した?

日産自動車に対して大きな功績を挙げたカルロス・ゴーン氏ですが、上記の金融商品取引法違反で逮捕されました。

15億円の保釈金を払い保釈中でしたが、2019年12月29日にレバノンへ逃亡。自宅からは徒歩で白昼堂々と外出。新幹線で大阪のホテルに移動し、音響機材の箱に隠れて出国し(X線検査は任意だったようです)プライベートジェットで移動したとされています。トルコ経由でレバノンへ入国したようです。本人のパスポートは鍵付きのケースに入って携帯していたとのことですが、4桁のダイヤル式であり、根気さえあれば普通に解錠できたと思われます。

多数の協力者がいたようですが、その素性は不明です。うち1人はアメリカの特殊部隊出身のようです。カルロス・ゴーン氏はレバノンから次のような声明を発表しています。

私は今、レバノンにいる。もはや、有罪が予想される日本の偏った司法制度の下でのとらわれの身ではなくなった。そこでは差別がまん延し人権が侵害され、日本が順守すべき国際法や条約が全くもって軽んじられていた。私は裁判から逃れたのではなく、不公平さと政治的な迫害から解き放たれた。ようやくメディアと自由にやりとりできる身となり、来週から始めるつもりだ。

日本経済新聞より

日本の司法制度が人権侵害をしていたために出国した意思があるようです。

また、1月8日にレバノンで記者会見を開き、無罪を主張し、今回の事件は西川元社長を含めた日産の経営陣の陰謀であるとの主張をしました。

今後のカルロス・ゴーンを巡る動きは?

この密出国を受け、東京地裁判決は保釈取り消しを認めました。これにより保釈金15億円は取り上げられ、日本政府はレバノンへカルロス・ゴーンの身柄引渡しを求めると思われます。しかしレバノンは日本と犯罪人引渡し条約を結んでおらず、レバノンではカルロス・ゴーン氏は英雄扱いであることから、カルロス・ゴーン氏の日本への身柄引渡しは困難を極めると予想されています

カルロス・ゴーン氏の身柄が国内に戻らない限り裁判は再開されず、今回の事件はこのまま終了となる可能性が高いと思われます。

自動車業界に衝撃を与えたニュース。何ともお粗末な結果に終わりそうです。

まとめ

不正をクーデターのような形で暴かれ逮捕されるも、海外逃亡で終わった今回の事件。日産という日本を代表する大企業を再建し、偉大な功績を残してきた経営者の末路としては悲惨で劇的なものになってしまいました。今後本人から多くが語られるようです。日本の司法制度に対する批判も増え、日産の社内に蔓延る問題も益々明るみになっていくと思われます。今後の政府と日産の対応には注目です。

また、本事件は既に逮捕されたグレッグ・ケリー氏含め組織的な犯行ある可能性が高く、今後はカルロス・ゴーン不在のままグレッグ・ケリー氏の罪状にたいして裁判が進む可能性もあります。

個人的に不思議なのが動機です。何故、カルロス・ゴーン氏はこのような小さい不正を働いたのか。有価証券報告書に記載した所で投資判断を変更するような金額ではなく、カルロス・ゴーン氏の功績を考えれば妥当な金額とも思えるため、わざわざ虚偽の記載をするメリットはなかったのではないかと思います。その辺もレバノンからの引き続きの声明で今後明らかになって行くのでしょうか。