アフターコロナの自動車業界はどうなる?
中国の武漢で発生し、世界中に広がった新型コロナウィルス (COVID-19)。現在も世界中で感染拡大は続いており、都市のロックダウンにより経済活動がストップし、世界経済にも大きな影響が出ています。
その影響を受けるのは自動車業界も例外ではありません。販売台数は世界中で大幅に減少。各自動車メーカの決算は悲惨的なものになりました。トヨタ自動車は今2021年3月期の業績予想を79.5%減と発表しています。
しかしこのような状態の中、日本では新型コロナウィルスの感染拡大は減りつつあり、事態は収束しつつあります。
今後、新型コロナウィルス が収束後のアフターコロナでは、自動車業界はどうなっていくのか。個人的な見解を書いていきます。
需要のリバウンドはある
まず、今回の騒動で減少した需要のリバウンドは存在すると思います。自動車産業はモノを売る産業です。現在、工場や販売店の休止により販売台数は大幅に減ってはいますが、車を買いたい人は外出自粛やロックダウンの影響で先延ばしにしているだけであり、需要が完全に蒸発してしまった訳ではありません。
当然、景気の悪化により給料が減少し、新車から中古車の購入に流れたり、自動車を買い替えるのをやめて今持っている車を使い続ける選択をしたりと、販売台数の減少は見込まれます。必要性が低く嗜好性が高い高級車やスポーツカーの需要は大幅に落ち込むかもしれません。また、レンタカーや社用車などの商用需要は落ち込むと思われます。
しかし飲食店や観光といった完全に需要が蒸発してしまった業界に比べるとかなり軽微であると思われます。
よって自動車の需要に関しては、落ち込むものの、絶望的ではないであろうというのが個人的な見解です。
自動車の需要が伸びる可能性も
今回の新型コロナウィルス騒動で見直されつつあるのが、都市部への一極集中です。一気にテレワークが加速し、在宅勤務という勤務体系が浸透し当たり前になりつつあります。そうなると都市部のオフィスへ通勤し、同じ場所で大量の人間が働く体系の重要性は減りつつあり、むしろ今後も完全に収束しないであろう新型コロナウィルスへの感染リスクが高まる行為でしかありません。
そうなったときに進んでくるのは地方や郊外へのオフィスの分散化です。また、都市部への通勤の回数が減るのであれば、都市部から離れた地域に移住する人も出てくると思われます。そうやって地方に人が移動することによって、車の需要が増えてくる可能性も出てきます。
昨今はスマートフォンの普及や趣味の多様化により、若者の車離れが叫ばれていますがまた車の普及が進めば、車が趣味という若者も増えてくるかもしれません。
ただし自動車業界は厳しい状況が続く
自動車業界は新型コロナウィルスの感染拡大前から、非常に大きな投資を強いられてきていました。「CASE」 と呼ばれる革新技術に関してです。「CASE」 とはConnected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)のそれぞれの頭文字を取ったものです。車の概念を大きく変化させる項目であり、それらの技術革新には莫大な金額の投資が必要です。
個人的に特にメーカーの負担が大きいであろうと予想しているのが Autonomous/Automated(自動化 )とElectric(電動化)です。
前者の Autonomous/Automated(自動化 ) は既存技術の組み合わせだけでなく、画像処理技術や各種センサーの開発、そしてそれらから得られた情報を元に行う車両制御の技術など、今まで専門分野ではなかった 多くの技術開発に取り組む必要があります。そのための人員、開発環境など多くの新規投資が必要です。決して軽いものではありません。
後者の Electric(電動化) はそもそも投資に対するリターンが少ないと思われることが問題です。EVは主流になる?電気自動車は本当にエコカーなのか?の記事にも書いた通り、EVは一概に環境に良い乗り物とは限りません。また、普及させるにはインフラ整備がほぼ不可欠であり技術的ハードルがまだまだ高いのが特徴です。数十万で燃費、静粛性、加速など商品魅力が向上するハイブリッドカーとは異なり現在ほとんどの人はEVを積極的に購入するメリットがあまりありません。
それでも各自動車メーカーはEVを増やさざるをえない車業界の記事でも書いた通り企業平均燃費規制であるCAFE規制を満足させていく必要があり、需要のないEVを赤字覚悟で販売しなければなりません。
こうした莫大な技術開発投資が必要な自動車業界は、新型コロナウィルスの影響が収まったとしても経営状態は楽観的とは言えない環境が続くと思われます。そして今後こういった環境が長く続くことによって弱い自動車メーカーは買収されていき、業界の再編が加速していく流れになりそうです。
まとめ
アフターコロナの自動車業界について、個人的な見解をまとめてみました。個人的には新型コロナウィルスの影響は一時的であるとは思いますが、技術革新の流れには逆らえず各社厳しいものになっていくと考えています。